会場予約で貰えたA2ポスター
- 音楽
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席は赤印の二階席前列
まだ客席が明るいうちから手拍子がわき起こった
たくろー、たくろー、と怒号めいた野太い声が四方八方から飛び交い
異様ともいえる熱気が開演前の会場に充満していく
ファンの思いは恐らく一点に絞られていた
「たくろーはもう大丈夫なんだろうか」
吉田拓郎は2009年に「生涯最後の全国ツアー」と銘打って全国公演を始めたが、
慢性気管支炎の悪化によって日程の半ばで中止した
07年の全国ツアーも体調不良などから中止している
03年に肺がんの手術を受けて以来、常に健康面の不安と戦ってきた感がある
首都圏3都市4公演に絞った3年ぶりのライブの最終日
「大丈夫なんだろうか」は杞憂となった
大声援を浴びながら現れた拓郎は、
先ず「ロンリー・ストリート・キャフェ」を弾き語りで披露
次の「落陽」で早くも3階席まで総立ちになった
50〜60代の男女が大半を占めた客席が、である
声のパワーは、以前より増したのではないか
太い声を怒鳴るように吐き出す乱暴な歌い方だが、歌詞の一言一言が耳に突き刺さる
ロックの迫力とフォークの説得力が渾然一体となり、緊張感と疾走感を生む
昔からの拓郎節だが、こんなに力強かったかと思わせる好調ぶりである
新曲の「僕の道」をはじめ、最近10年余りの曲を多く演奏したのが印象的だ
過去の伝説は脱ぎ捨てた、今の自分を見てくれと言うことだろう
66歳になり、全国を回る体力と気力はなくなったかもしれない
しかし公演数を絞って集中すれば、ここまでやれる
同じように年齢を重ねたファンにも、おそらく拓郎自身にも、
希望と勇気を与える充実したステージだった
2012.11.6 NHKホール 日経新聞編集委員 吉田俊宏
以下四十年前、昭和四十七年(1972)
LP「元気です」予約購入で貰えたA全ポスター
当時 Konica C35で撮影