なんじゃもんじゃ
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なんじゃもんじゃ
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著者:山口瞳 昭和46年(1971年)3月1日 文藝春秋社刊より抜粋
私たちは鳴門の旅館に泊った。夜になって町へ出る。
むかし、鳴門の花柳界は活発であったという。芸者が百五十人はいたという。
遊郭が有り、百二、三十人の女郎がいたという。
<中略>
翌日、すぐに出立すべきであったのを、私は、ぐずぐずしていた。
宿を変えた。その宿がどこであったかを書かぬ。徳島県内であるとだけ記しておこう。
<中略>
寝苦しい、暑い、胸が重い。仰向けになり、横になり、輾転反側する。
するうちに、どうも、トロトロッと眠ったらしいが、すぐに目をさました。
あたりが騒がしい。女の声がする。三味線や鳴物の音がする。
前の部屋にも、うしろの部屋にも芸者が入ったらしい。嬌声がきこえる。
廊下をバタバタと掛ける音。キャーという声。アラーという声。うなり声。
参考サイト
徳島の幽霊騒ぎ
http://www.asahi-net.or.jp/~qy4s-nkmr/free5.html
http://ryoshida.web.infoseek.co.jp/jikenbo/003boat.htm
日本全国の狸(徳島多い)
http://www.waw.ne.jp/youkai/9709/tanukiDB2.html
http://hatena2.at.infoseek.co.jp/mononoke/04/tanuki.html
徳島の幽霊狸 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BD%E9%9C%8A%E7%8B%B8
山口瞳 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E7%9E%B3
著者:山口瞳 昭和46年(1971年)3月1日 文藝春秋社刊より抜粋
私たちは鳴門の旅館に泊った。夜になって町へ出る。
むかし、鳴門の花柳界は活発であったという。芸者が百五十人はいたという。
遊郭が有り、百二、三十人の女郎がいたという。
<中略>
翌日、すぐに出立すべきであったのを、私は、ぐずぐずしていた。
宿を変えた。その宿がどこであったかを書かぬ。徳島県内であるとだけ記しておこう。
<中略>
寝苦しい、暑い、胸が重い。仰向けになり、横になり、輾転反側する。
するうちに、どうも、トロトロッと眠ったらしいが、すぐに目をさました。
あたりが騒がしい。女の声がする。三味線や鳴物の音がする。
前の部屋にも、うしろの部屋にも芸者が入ったらしい。嬌声がきこえる。
廊下をバタバタと掛ける音。キャーという声。アラーという声。うなり声。
前後左右さわがしくなってくる。時計を見ると、午前二時である。
眠れないのは尿意のせいではあるまいか。そう思って、思いきって廊下に出る。
実は、なにをかくそう、私は便所に行くのが怖かったのである。
廊下に出ると、音が消えている。奥の部屋に灯が点いている。
入口にスリッパが二足おかれている。私は、それをはっきりと見た。
「ははあ、お床入りとなったか」芸者が客と寝たと思ったのである。
便所から帰って、布団にもぐり、目をつぶるとまたしても騒々しくなる。
こんどは、ドスト氏の部屋だ。
<中略(ここで女郎の幽霊が出る)>
朝になった。
装画:関保寿(ドスト氏)
ドスト氏がやってきた。女中も来た。
「三月二十三日の午前二時という時間を覚えておいてください」と私がドスト氏に言った。
眠れないのは尿意のせいではあるまいか。そう思って、思いきって廊下に出る。
実は、なにをかくそう、私は便所に行くのが怖かったのである。
廊下に出ると、音が消えている。奥の部屋に灯が点いている。
入口にスリッパが二足おかれている。私は、それをはっきりと見た。
「ははあ、お床入りとなったか」芸者が客と寝たと思ったのである。
便所から帰って、布団にもぐり、目をつぶるとまたしても騒々しくなる。
こんどは、ドスト氏の部屋だ。
<中略(ここで女郎の幽霊が出る)>
朝になった。
ドスト氏がやってきた。女中も来た。
「三月二十三日の午前二時という時間を覚えておいてください」と私がドスト氏に言った。
「何か異変があったに違いないと思いますから」
それから、女中に言った。
それから、女中に言った。
「この部屋は何かあった部屋ですか」
「いいえ、なんにもきいていません」
「いいえ、なんにもきいていません」
「こわい夢をみたんです」
女中はだまっている
「ゆうべは騒がしかったですね。うるさくて眠れなかったよ。芸者がはいったでしょう」
「いいえ」
「そんなことはない」
「でも、お客さんはお二人だけですよ」
「嘘だよ、奥の部屋に灯りがついていた。スリッパも二足あった」
「ゆうべは騒がしかったですね。うるさくて眠れなかったよ。芸者がはいったでしょう」
「いいえ」
「そんなことはない」
「でも、お客さんはお二人だけですよ」
「嘘だよ、奥の部屋に灯りがついていた。スリッパも二足あった」
こんどは女中が怖い顔をした。
<中略(お遍路の話し)>
私たちは徳島市に出て、新築のホテルに泊まった。同じ部屋に寝ることにした。
女中が私の持っているマッチを見て叫び声をあげた。昨夜の旅館サービス用マッチである。
<中略(お遍路の話し)>
私たちは徳島市に出て、新築のホテルに泊まった。同じ部屋に寝ることにした。
女中が私の持っているマッチを見て叫び声をあげた。昨夜の旅館サービス用マッチである。
「お客さん、この宿屋に泊まったんですか。何かありませんでしたか」
私はあらましのことを告げた。
私の泊まった部屋には夫婦心中があったという。ドスト氏の部屋では老人が死んだという。
また、奥の部屋のそばでは若い女が変死するという事件があったそうだ。
「にぎやかだったでしょう」
「そうぞうしかった。よくわかるね」
「阿波の狸ばやしと言いましてね。賑やかなんです」
一般に心中のあった部屋に寝ると騒がしいと言う説もあるようだ。
間違ってもこちらには出ないと思いますが(^^
私の泊まった部屋には夫婦心中があったという。ドスト氏の部屋では老人が死んだという。
また、奥の部屋のそばでは若い女が変死するという事件があったそうだ。
「にぎやかだったでしょう」
「そうぞうしかった。よくわかるね」
「阿波の狸ばやしと言いましてね。賑やかなんです」
一般に心中のあった部屋に寝ると騒がしいと言う説もあるようだ。
立派な阿波徳島某所、某旅館
間違ってもこちらには出ないと思いますが(^^
参考サイト
徳島の幽霊騒ぎ
http://www.asahi-net.or.jp/~qy4s-nkmr/free5.html
http://ryoshida.web.infoseek.co.jp/jikenbo/003boat.htm
日本全国の狸(徳島多い)
http://www.waw.ne.jp/youkai/9709/tanukiDB2.html
http://hatena2.at.infoseek.co.jp/mononoke/04/tanuki.html
徳島の幽霊狸 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B9%BD%E9%9C%8A%E7%8B%B8
山口瞳 Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B1%B1%E5%8F%A3%E7%9E%B3